人を育てるのはスキルではない

中国の戦国時代、楚に孫シュクゴウという人物がおりました。彼の子供時代のエピソードです。

遊びに行った孫が泣いて帰ってきたので、母が理由をたずねると彼はこう答えました。

「両頭の蛇を見たので、自分は数日中に死ぬでしょう。それが悲しいのです」

当時は、両頭の蛇を見ると死ぬと信じられていたのである。

すると母はたずねた。

「では、その蛇はどこにいるのですか?」

「ほかの人が見てはいけないと思ったので、殺して土に埋めました」

それを聞いた母は、息子をこう言って慰めた。

「それなら心配はないでしょう。おまえはけっして死にません。昔から、陰徳あれば陽報ありというでしょう。他人が見ることを考えて蛇を殺したのは陰徳なのです。あなたは死ぬどころか、必ず陽報があるでしょう」

孫さんは後に国守となり、その名を聞いただけで国が治まったという。


というわけで、社会通念という暗示的観念に対して、道徳的な社会通念をぶつけて、暗示をといた母親のお話でした。

この話に関しては、最近私は少々考えることがあります。

暗示学を初めて学ぶときは、こんなことを自分もやってみたいと、おもしろがってやったものです。

でも、いまごろになって考えますね。それだけでいいのだろうかと。

この母親はどうしてこんなうまい暗示を考えついたのでしょうか。

それは、やはり子を思う親の気持ちなんでしょうね。

「子供をなんとか助けたい、よくなってもらいたい」

そんな気持ちがうまい言葉を思いつかせたのだと思います。

ですから、そういう強い思いをもつ人が、暗示の技術を少し学べば、ものすごく効果があるはずなんです。

ところが、テクニックばかり追いかけていて、その心をおいてけぼりにしている人は、あまり進歩しないと思いますね。

セールスなんかも、きっとそうではないでしょうか。

私の場合でも、なんとか読者にお役に立ちたいという思いをもちながら、ブログで自分の本を宣伝すると、結構買っていただけたりするんです。

ところが、売りたい、売りたいとだけ思って書くとまず売れませんね。これは私の実感です。

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