リーダーの仕事:連帯感をつくる
リーダーの仕事として、
成長の機会を与える、仲間意識をつくる、自由度を与える、というのがとても大事だと思っています。
今日は仲間意識をつくるということについて触れます。
文芸評論家の江藤淳さんが書いた「犬と私」のなかに出ていた文章をご紹介しましょう。
江藤さんは仲間5人で、「三田文学」という雑誌を出していた。事務所は銀座にあって、向かいには文芸春秋のビルがあったそうです。
結局、二年半ほど続けて潰れたのですが、その当時はとても楽しかったとか江藤さんは言っておられる。
何が楽しかったのかというと、共同作業なんですね。
「腹がへると、冬ならば三十円のナベヤキウドン、夏ならば五十円のカレーライスをとって食った。……もともと先輩のもちもので、顔の広いYがその片隅に机をおかせてもらったのがはじまりだったが、血の気の多いのが集まったが運のつきで、たちまち談論風発、蜂の巣をつついたようなさわぎになり、しまいにはどっちが家主かわからないような有様になった」
「あるとき、石原慎太郎がいった。
『文士ってのは、ありゃ孤独だね。つまんねぇね。そこへ行くと映画ってのはいいぜ、なにしろ人間がいっぱいいて、みんなでやるんだからな』
ぼくはさしずめこの意見にまったく同感である。気の合った仲間たちと、欲得をはなれて、同じ目的のために協力したという経験はちょっととりかえがきかない」
「よく組織というものがかならず人間をだめにするというようなことをいう人もいるが、それはたぶんぼくらの仲間やぼくらのジェネレーションにある一種の共和精神を知らない人のいうことである」
みなさん、江藤さんの意見をどう思います?
私は江藤さんに全面的に賛成なんです。私は以前から、友人をつくるのにいちばんよい方法は、いっしょに仕事をすることではないかと思っておりました。江藤さんと同じ考えかたですね。共同作業というのは、連帯感を高めますから。
私はいま一人で仕事をしていますが、できればそういう連帯感のようなものをもちたいなと思っています。もちろん気の合わない人とではそうはいかないですが、やっていくと気が合うようになるということもありますからね。
若い人には、そういう共同作業の楽しさを体験させてあげたいな、体験してもらいたいなと思いますね。
昔はたぶん、会社がそういうものを提供していたと思うのです。会社というのは、学生の体育会系クラブ活動の延長のようなものだったといえるでしょう。
そういうものに面白さを感じていた人は、おおぜいいたのでしょう。プロジェクトXにでてくるケースなどは、そういうものがほとんどではないでしょうか。
いまは、そういうものを会社のなかで持ちにくくなっているのかもしれません。
そのため、もっと社会貢献に直結する仕事をしたいという若い人が増えているのかもしれません。NPOに人気がでているのも、そのような流れなんでしょうか。
携帯小説がはやっているそうですが、この種の小説では、作者と読者のコミュニケーションが活発で、読者の意見を取り入れながらストーリーをつくっていくこともよくあるそうですね。
あるいは、そこにもそういう連帯感のようなものがあるのかもしれません。この場合は連帯感というのは強すぎて、共感くらいなのかもしれませんが……。
連帯感を養うには、まずメンバーの個性を把握する必要があります。それぞれの人の特徴をつかんで、うまく仕事ができるような環境をつくってあげる、ということです。
人間の勉強が大事という、いつもの言葉で結びます。
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