部下がついてくるリーダーとは

部下がついてくるリーダーというのは、どういう人でしょうか。

私の答えは「希望の星を与えられる人物」です。もちろん、状況によって希望の星の種類は異なります。

戦争であれば、「勝てると思える」ということでしょう。どんなに過酷な命令を課す将軍でも、勝てると思える将軍に兵隊はついていきます。

だから、第二次世界大戦アメリカ戦車部隊で有名なパットン将軍に、部下はついていった。あんなにいやな人はいないと思いますが、それでもついていった。

それに比べて、日露戦争の乃木軍司令官のもとに配属されると知らされた兵隊は、家族と手を取りあって泣いたといいます。

どんなに聖将と呼ばれ、武人精神を体現したような高貴な人物であっても、勝てそうもない将軍の下では、兵隊は働く気がしないのです。
 

◆希望の星とは何か

希望の星というのは何でしょう。それは「やれる」、「いけるぞ」と空想を呼び起こすもののことです。ですから「暗示」なのです。もちろん、リーダーの暗示です。自己暗示ではない。メンバーにかける暗示です。
 
個人に希望の星を与えることができるなら、チームに、組織にも、希望の星を与えられるのではないだろうか、という発想が次にわいてきました。

同じことをやるなら、希望をもちながら行ったほうが、成功する確率は絶対高い。
 
そこで、組織が非常に苦しい状況にあるとき、どうすれば希望の星を与えられるだろうか――私はそういうこと考え、『成功を確信させる暗示型戦略』という本にまとめたのです。これは、特に非常時に向いた経営戦略の構築法です。
 
その事例として、私は日本ビクターのVHS戦略を取り上げました。

昔のことで、知らない人がいるかもしれませんが、かつてソニーとビクターは、ビデオの業界標準規格を争ったのです。VHS対ベータの陣取り合戦ですね。
 
消費者は、異なる方式のビデオを二つも買うわけにはいきませんから、シェアの高いほうを買います。そうすると、シェアの高いほうが益々シェアが増えるわけです。

そのため、ビデオ事業の浮沈は、自社の方式に参加してくれる他のメーカーをどれだけ集められるかで、決まってしまうのです。
 
この勝負はビクターのVHSを擁する陣営に軍配があがりました。たいへんな番狂わせでしたね。ソニーのベータ陣営が負けるなんて。

そういう厳しい戦いを、メーカーはまだ生々しく覚えています。それで、家電業界では、ことあるごとに、業界標準ということを言います。
 

★希望の星――松下幸之助
ビデオ事業の陣取り合戦は、あとになって振り返ると、ビクターの親会社である松下電器がキーを握っていたことがわかります。

松下の技術陣はビクターが大嫌いで、いつもけんか腰でした。もう少しのところで、松下電器は、子会社のビクターではなく、ソニーの陣営に入るところまで行ったのです。
 
それを押しとどめたのが、松下幸之助です。彼は、以前から、どういうわけかビクターに好意をもっていたようです。
 
(続く)

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人間の行動基準(感受性)は大ざっぱにいって10種類あります。それを頭に入れ、なおかつそのタイプを識別して、対人折衝にあたれば、指導は非常に効果的になります。

これらについての概説は、12月初頭に発売される『リーダーの人間行動学――人間を見る力を鍛える』(鳥影社)にまとめておきましたので、ご一読ください。

この立読みを準備しました。一部ごらんいただけます。こちらから

こちらの研修講座も参考にしてください。
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