サブシステムの連動を常に考慮せよ

昨日、伝動戦略について説明しました。今日もその話題をとりあげます。

以前、NHKの番組で(午後10時から11時半)、蒙古襲来の事情を取上げていました。新しい発見があってなかなかおもしろかったと思います。

クビライは朝鮮半島に侵攻して高麗を属国にしましたが、その高麗の人間と資材を用いて日本を侵攻しようとしました。

これはクビライの常套手段で、手に入れた国を次の侵略の資源に使うのです。

ところが、高麗のなかで反乱軍が起こり、これがかなり頑張って抵抗したようです。彼らは日本にも援軍と食糧援助を求めてきたのですが、時の鎌倉政権や朝廷は、このメッセージの意味がよくわからなかったようで、結局無視してしまいました。

当時の鎌倉は、南宋とは通商や文化交流がありましたが、朝鮮半島の事情にはうとかったようです。

しかし、ともかくこの反乱軍が頑張ってくれたおかげで、元寇の時期が遅れ、しかも戦闘のための資材を消費してしまったわけです。

それで、第一次元寇では、蒙古軍(実際は高麗軍)は、わずか1日で引き揚げてしまいました。

第二次元寇では、台風のために日本はなんとか助かったわけですが、実はクビライは第三次攻撃を計画していたのだそうです。

同じ頃、元軍はベトナムにも侵攻していましたが、ベトナムに頭脳的な作戦で敗北してしまいました。

怒ったクビライは、日本侵攻用に用意していた船団をベトナムにまわしたのだそうです。ということで、なんとか幸運に日本は侵略を免れたというわけです。

日本国内のことだけを見ていては「神風で助かった」くらいのことしか思いつきません(実際、それがあとあと問題になるわけですが)。

しかし、目をもう少しグローバルに開けば、いろいろなことが見えてくるわけです。

このときの状況は、拙著『先見力訓練法』で触れた徳川政権末期の「列強の侵略」ケースとよく似ています。

リーダーが先見力を鍛えるには、視野を眼前のことだけでなく、もっと広くとるということが大事です。

私はこの考え方をもう少し抽象化して、システム論としてとらえています。

つまり、眼の前の問題に固執するのではなく、他のサブシステム間の相互作用、あるいはサブシステムの連動を利用するということです。そのようにしますと、問題解決の手段がもっとずっと拡がります。

上の例ですと、ベトナムとの連携とか、高麗の反乱軍との連携といったことが浮んできます。

ところが、目を国内だけに向けていると、海防のための沿岸整備といった類のことしか思い浮かびません。もちろん、それは重要なことですが、もっと手段はいろいろあるということです。

そういう発想が拙著『伝動戦略』にまとめてあります。この本はリーダーにはぜひ読んでいただきたい本なのです。

戦略だけでなく、日常生活の問題解決にも利用できます。リーダーのかたたちは、ぜひサブシステムの連動をうまく使えるようになっていただきたいと思います。

それと、どのサブシステムを選ぶかということは、どんな相互作用を用いるかということとも関係します。

それには人間を見る力を鍛えるほかありません。

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