組織の動かし方

人は長いものに巻かれやすいを一旦書きましたが、去年書いておりましたので、急遽変更です。

私が考える組織のイメージをご説明いたしましょう。

◆組織とは何か?
組織には組織の構成要素が必ずあります。私はこれをビー玉の詰まったビニール袋と表現します。

ここでちょっとクイズを出しますので考えてください。

今、あなたの眼の前に透明なビニール袋があって、中にビー玉が半分くらい詰まっているとします。その中にたったひとつだけ黄金のビー玉があります。

でも、それは袋の中にあってよく見えません。あなたはそれをもっとよく見える位置に移動させたいと思っていますが、どうしたらよいでしょう。

いちばん簡単なのは、ビニール袋を思いっきり揺さぶることですが、それは少々あなたには重すぎてできないので、これは答えから除外します。

あなたは、いろいろ考えた末、堪忍袋の緒を切り、袋に手を突っ込んで金の玉をつかもうとするかもしれません。

でも、これは駄目です。あなたの手はビー玉の中に埋もれてしまうだけです。おまけにビニール袋がグニャッと変形して、もう何が何だかわからなくなる。

そうしているうちに、知恵者が表れてこう言いました。

「ビリヤードの要領でやってごらん」

なるほどと思ったあなたは、手近なビー玉を選んでそれを拾い上げました。すると、隙間ができたので、隣のビー玉がそこに動いてきました。

全体から見るとわずかな変動です。しかし、同じことを何個か繰り返していくと、たしかにビニール袋の形状は少し変化しています。当然、黄金のビー玉も少し位置を移動しています。

このクイズでは、ビニール袋は全体システムであり、ビー玉はその構成要素(サブシステム)というわけです。

また、黄金のビー玉は、さしずめ問題の争点といえるでしょう。

ビー玉をひとつ動かしただけで、他のビー玉の位置は変わります。信じがたいかもしれませんが、これがあらゆるシステムに共通する動作特性なのです。その特性のおかげで、直接黄金のビー玉に力を用いなくても、それに影響を与えることができるのです。

では、なぜこのような作用が生じるのでしょうか。

それは、ビー玉たち(サブシステムたち)がそれぞれ相互に作用しあっているからです。この相互作用を把握することこそ、私の組織行動学でもっとも重要なことです。

つまり、全体システムの行動特性は、実際にはサブシステム間の相互作用によって決まるというのが私の考えです。これがいちばんだいじなところであり、私が主張したいところなのです。

◆例題
では、例として自民党を考えてみましょう。ビニール袋における黄金のビー玉を自民党として、その行動特性を考えてみましょう。

自民党は中央に党本部があって、そこに国会議員がおります。その周辺には地方支部と地方議員がおります。支持者も当然各地にいるわけですが、それらすべてがサブシステムにあたります。

ここで「ビー玉の詰ったビニール袋」をもう一度想像してみてください。ビー玉とは、システムの構成要素(サブシステム)です。つまり、国会議員や地方議員、支持者、さらには支援団体、業界関係者などといったものはみなビー玉なのです。

自民党の行動は、党の中枢議員によって決まるように思われるかもしれませんが、こういったビー玉の作用を常日ごろから受けています。特に、選挙の時にはそういう面が強く見受けられるはずです。

それから、自民党の行動は、他の政党やその支持団体の行動にも当然影響を受けます。これらの動きも視野にいれなければなりませんので、やはりサブシステムと考えられます。

さて、こうしてみると、自民党を含めたひとつの大きなシステムが視界に入ってまいります。これを私は全体システム、つまりビニール袋と定義するわけです。

ビニール袋の定義は人によって異なるでしょう。ある人は、アメリカを含めたより大きなビニール袋を考えるでしょう。それはその人の立場と抱えている問題によるでしょう。

大きな金融問題や外交問題では、当然そこまで袋を広げて考える必要があります。それはケースバイケースでしょうね。

自民党は、あるいは総理総裁は、自分の意志でことを決め、それによって自民党が行動しているように見えますが、実はそこにはいろいろな働きが作用しているわけです。

そのなかの最適なビー玉を選んで相互作用を発揮させ、やがて自分の意に沿った方向に黄金のビー玉を動かすか――これが私の考える伝動戦略ですが、この戦略も組織行動学のひとつの応用といえるでしょう。

繰り返しになりますが、組織行動学ではサブシステム間の相互作用をいかに活用するか、あるいはその相互作用をどう理解するか、ということがとても重要なのです。

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