リーダーの人間行動学1

第一章 リーダーの人間行動学概論

 リーダーがメンバーを指導するさい、一人ひとりの性格や行動の癖を理解しつつ指導することはたいへん望ましいことである。しかし、これは言うはやすしの類であって、実行するのはなかなか難しい。

 もし、あなたの部下が何か失敗してめげていたとしよう。あなたは彼をほめたり認めたりすることで、なんとか元気を取り戻させたいと考えるかもしれない。ところがそういうとき、彼に対してどんな言葉を投げかけたらよいかまったく見当がつかずに、当惑してしまった経験がないだろうか。あるいは、実際に言葉をかけても、相手の反応が予想とは違ってしまった経験はないだろうか。

 このようなことが起きる原因は、相手のことがよく理解できていなかったからである。たとえば、ほめるときには、相手の心にピッタリくるほめ言葉でないといけないのである。相手にふさわしい言葉かけをしないかぎり、相手は絶対に動かされない。ところが、それがわからないものだから、気持ちはあっても相手の反応はいまいちになる。

 では、どのような発想でほめ言葉や説得の仕方を考えたらよいのだろうか。この章では、それについて基本的なところをおさえていくことにしよう。


1 指導のカスタマイズ
指導力の源泉は個別対応能力

 以下は有名なジョークである。あとの方に質問があるので、読んでからお答えいただきたい。

 船が難破して、乗客がボートに乗り移ってきた。だが、ボートはこれ以上人を乗せることができない。誰かが海に飛び込んで岸まで泳がなければならない。どうやって説得するか。

 イギリス人にはこう言えばよい。
「ジェントルマンらしく振る舞ってくれ」

 ドイツ人にはこうだ。
「船長の命令である」

 イタリア人にはあえてこう言う。
「君は飛び込むな」

 アメリカ人にはどうか。簡単である。
「保険に入っているから大丈夫だ」

 そして、日本人にはこうなる。
「ほかの皆さんも飛び込んでいますよ」

★クイズ
 各国の国民性から、彼らがどんな行動基準をもっているのかを考えていただきたい。

 このジョークは各国の国民性がよく表れていて、なかなかおもしろい。実は、それぞれの国民の感受性傾向(行動基準の傾向)が色濃く表れているのである。どんな感受性か、読者の皆さんにもお考えいただこう。答えは第四章にあるので、あとでチェックしていただきたい。

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