欠点を指摘する指導法に合う人・合わない人

◆野村流指導法に合う人・合わない人

 野村さんは、彼の著書のなかで、選手の操縦に成功した人たちの例として三人の名をあげている。江夏、江本、門田だ(二)。いずれもひと癖あるタイプで、人のアドバイスを簡単には聞かないタイプだった。

 江夏投手は監督に対してすぐ反発する選手だった。ただ、自分の技術に対して非常に自信をもっていたため、技術についてケチをつけると、正しいことなら受け入れるだけの度量があったという。

 江夏の勘違いを自覚させるために、厳しいことをあえてガンガン指摘したところ、江夏は野村さんに興味をもち、自分から近づいてきたというのである。あとで、「こんなに言いにくいことをはっきり言う監督ははじめてだ」と語っていたとか。

 江夏のように反骨心がおう盛で、自分に自信をもっている人間には、叱ったりケチをつけたりする方がかえってよい結果を招く場合が多い。もちろん、こちらも江夏以上の知識と自信がないとできないことだが。

 江本投手の場合は、野村さんが注文をつけると逆らってばかりいたそうである。江本は、野村さんの好む、忍耐、辛抱、克己心といった言葉は大嫌いであり、そういうのはダサイ行為だと思うタイプだと、私は考える。

 彼は何事もスマートに要領よく合理的にやりたい人間なのではないだろうか。ただ、たとえイヤなやつだと思っても、理屈が通っていればそのことを認めるだけの度量はあったのだろう。

 物事を合理的に考える人間にとって、非合理に満ちた行動をする人間はばかに見えてくるものだ。もし江本がそういう人であったなら、彼が阪神時代に「ベンチがアホやから野球ができない」と言って物議をかもしたときは、よほど腹に据えかねたのであろう。

 この場合、「アホ」というのは「合理的に考えられない」という意味ではなかっただろうか。本来、感情抑制が強いと思われる江本がキレてしまうのだから、相当ひどかったのだと思う。

引用:『リーダーの人間行動学――人間を見る力を鍛える』(鳥影社)

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