コミュニケーション力をつけるステップ

リーダーのコミュニケーション能力を高めるためにL研リーダースクールで通信教育研修を行っている佐藤直曉です。

コミュニケーションの第一歩は、相手の行動特性を即座に察知することです。それに沿って話をしないと、なかなか理解されません。

情にやかましい人に利害を説いても、怒り出すかも知れません。逆に理解に敏い人に情を説いても鼻でせせら笑うだけでしょう。

というわけで、人間を見る目をもっていないとリーダーは苦しい。

では、どうすれば人間を見抜くことができるのか。

私は、三つの側面から考えるようにしています。それを簡単にご説明しましょう。

第1は、感受性の勉強です。性格分析と言ってもよいですが、感受性分析は、すでにこのブログで何度もふれているとおりです。

第2は、行動観察です。特に、行動パターンの分析と、それからはずれる異常行動の分析が重要だと思います。

これによって、どんな感受性で、どんな行動特性があるかを察知します。

第3は、立場分析です。組織の中で、どういう位置づけにあるのか、その人の立場で考えます。たとえば、トップと、ミドルでは、性格が同じでも行動が違ってくるはずです。

感受性の知識を私は特に重視し、人にお勧めしているのは、同じ立場に立っていても、感受性が異なれば行動も異なるからです。

世の中で、いちばん錯覚されていることが、この点でしょう。

相手の立場に立って考えるのはいいが、そのあと自分の価値観で相手を判断してしまってはいけないのです。相手と自分は違う価値観をもっていると、頭に叩き込まなければなりません。

では、二番目の行動観察について簡単に説明しましょう。

人間は、緊張した状態にあると、必ず同じような行動をとります。

ふだんは、あまりそういう面は出ませんが、いざとなると出てくるものです。そういう行動を観察していれば、その人の内面がよくわかるのです。

『リーダーの人間行動学』に書いた例ですが、泥棒なんかいい例でしょう。

要するに、たいていの泥棒は得意の手口というものがある。どんなことでもするわけではないのです。

空き巣だったら、昼間入る者もあれば、夜忍び込む者もいる。また、金を取る者、身分証を盗む者、貴金属専門に荒らす者など、それぞれ得意のパターンがあって、だいたいいつも同じやり方をするわけです。

会社の人間も同じなのです。なにか問題があると、すぐ腰が引ける者、やたらと威勢良く振舞ってしまう者、上司の顔色だけ見る者など、必ずパターンがあります。

そういうパターンを見つけ出すことが、まず初めになすべきことです。それには感受性の知識をベースに観察をすることが効果的です。

歴史上の人物を分析するのは、そのためのよい訓練になります。

私は乃木希典を研究して、つくづくそう思わされました。乃木は日露戦争で旅順要塞の攻略の指揮を任され、うまくいかなかった人です。

指揮官としての才能は最低でしたが、高潔な軍人らしく振舞うことについては、乃木は常に最高に気を配っていました。

能力の劣る人は、精神訓話をさかんにするようになります。実際乃木将軍の軍事的手腕は見るもあわれなものでした。

ただ、彼の場合は、精神訓話には行動が伴っていました。

乃木は、起きてから寝るまで軍服ばかり着て、寝間着のほかに和服を持たず、食事には稗(ひえ)飯に南瓜を好んだそうです。

客が来れば、軍服を着た人間には上座を与え、なにびとを問わず、軍服以外の者を末座におきました。

あるとき、乃木は浜松に出張し、気賀(けが)というところに泊まる機会があったのですが、このときは、運悪くよい宿舎がなかったため、土地の役人が近くの財産家の家に泊まるように手配しました。

ところが、それを聞いた乃木は大喝一声(だいかついっせい)「風雨霜雪の間に露営の夢を結ぶべき軍人が、そんな立派な家には泊まれない」といって、粗末な宿屋に泊まったのです。

この話は、無条件に乃木の軍人としての高潔さを示す美談として伝わっております。

彼の行動は、いつもこのパターンでした。自分が軍人らしい行動をしているかどうか、そう見えるかということが彼のすべてだったのです。

軍人らしいといっても、それは高潔な軍人に見えるかどうか、ということです。敵をあざむいてだまし討ちにするといった、“勝てる将軍”かどうか、ということではないのです。

しかし、軍人の鍛練をモットーとする乃木にはこんな逸話もあります。

ある旅館で、女中が顔を洗うために、たらいにぬるま湯を入れてもってきました。

それを見たお付きの武官は、「冷水に取り替えろ」と女中に命じました。彼は乃木が冷水でいつも鍛練しているのを知っていたからです。

ところが、乃木は武官を叱責しました。

「人の好意をむにするものではない」

なぜ、こんな逆に見えるような行動を乃木はとったのか。

実は、乃木にとってはちっとも矛盾した行動ではないのです。

これが理解できれば、乃木の人間性が一層理解できるようになったと言えます。

詳しくは拙著『リーダーの人間行動学』をご一読ください。

                    • -

新刊『リーダーの人間行動学――人間を見る力を鍛える』(鳥影社)では人間分析の方法論が示されています。体癖論の感受性理論をベースに、歴史上の人間(探険家スコット、乃木希典大村益次郎ショパンとサンド、空海最澄)の行動分析を通じて、感受性の解説を行っております。営業折衝や対人折衝にとても役立ちます現在、アマゾンなどのネット書店、紀伊國屋ジュンク堂などの大手書店で販売中。

なお、L研リーダースクールサイトでもご購入いただけます。ご購入いただいた方には特典のプレゼントがありますこちらから

L研リーダースクールでは立読みを準備しました。こちらから

                • -